第3章 With&アフター時代のフードテック
この章では、衛生対策によって、「食」の環境にも影響が出ていることを紹介しています。
例えば、感染した後に重症化する割合が高い原因として、肥満・糖尿病などの持病を抱えていることが挙げられています。これらを「食」からアプローチしてみると、飽食の時代によるカロリーの取りすぎは言うまでもありませんが、一方で、貧困層と呼ばれている人々が、いわゆる「フードデザート(食の砂漠)問題」、すなわち、栄養価の高い生鮮食品を手に入れることが経済的・物理的に困難で、その結果として安価な加工品を多用する食生活を強いられていることも原因になっているように感じます。
また、ウィルスそのものとの係わりとしては、効率的な畜産業を営むために、狭い場所で大量に家畜を飼育することで動物と人間との距離が縮まり、様々な栄養補助や抗生物質を投与することにより、未知なる新たなウィルスへの接点が増える事もあると思います。
そして、単純に経済活動としての「食」に関する影響です。特に外食業界は、衛生対策の影響を大きく受けている分野といえるでしょう。
例えば、アメリカの外食業界は、昨今、70%もの会社がレイオフ(一時解雇)を行い、そのうち44%が一時的な休業を余儀なくされています。一方で食料品のオンラインデリバリーは以前より三倍に増加しています。
衛生退学が必要な現状における外食業界では、店内での提供が一層難しくなり、否が応でも、店の外に販売機会を求めざるを得なくなったといえます。
ここでひとつ、考えなければならないのは、「外食」とは何か?ということです。
例えば、レストランを考えてみると、食材・シェフ・レシピ・料理場・ホール・お客様という「機能」が、一か所に集まる場所であり、それゆえに「密」を回避することが大変困難であるといえます。
しかしながら、この状況下では、
突き詰めると、すべてデリバリーで賄って家庭で食べる分においては、スープ、パン、メインディッシュ、デザートなどを、それぞれ別のところから注文することも可能です。食事はすべて同じところから、という観念は、すでになくなりつつあります。
今後求められる5つの領域
それでは、大きく価値観が変わりつつあるこの衛生対策が必要な状況下で、フードテックには何が求められるのでしょうか。以下に5つ挙げさせていただきます。
①医食同源
全世界的な健康への意識の高まりが進んでいる現在、今までのような肥満や糖尿病予防の食材のほかにも、自身の遺伝子や腸内細菌、バイタルデータ(人体の生命情報)を基にメニューを提案するサービスが生まれています。また、それを口にするだけで必須栄養素が取れる完全栄養食や、「未病」のために医者が薬の代わりにおすすめの食材を提供するサービスなどが始まっています。
②エンタメとしての料理
先に述べたように、外食がしにくい情勢下では、家で料理する機会が多くなっています。普段は買ってくるパンを自宅で焼くなど、新しく料理を始めるために調理家電を購入する人々も増えて、料理のプロセスそのものを楽しむようになってきています。また、オンライン料理教室なども盛況なようで、エンターテインメントとしての料理という分野も広がっています。
③代替プロテインの拡大
衛生対策が必要となった状況の初期の発生状況から、食肉自身の安全性に不安を持っている人々も相変わらず多いようです。そして、健康への意識がさらに高まっているため、植物性代替肉の需要は、前年比90%増となっています。また、通常であれば、大量の家畜を育てるためには、広大な土地と莫大な資料と水を必要とし、2~3年という年月がかかりますが、培養肉はそうではないため、積極的な開発分野です。
④フードロス対策
既存のフードロス問題を解決することはもとより、外食産業の落ち込みにより、農畜産漁業者が需給のバランスが崩れて生産物を余らせたり、飲食店が顧客減のために賞味期限が間近な商品を廃棄するなど、新たな問題が生まれました。その余剰品を、ダイレクトに消費者に届けるサービスや、飲食店から安価にテイクアウトできるサービスも生まれました。
⑤最先端ワーカー支援
万が一、厳格なロックダウンが行われても、治療を司る医療機関の方々と同様に、食品業界に従事する方々は、人々の食を確保する「最先端ワーカー」として働かざるを得ません。いかにして人やウィルスを介さずに活動できるか、が食品のサプライチェーン全体を守るためにも、必要なことです。そのために、ロボットの積極的導入や、経験や知識のデータベース化は、積極的に導入されるでしょう。
次章からは、具体的事例も交えて、それぞれの分野を深堀りしていきます。



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