以前、以下の記事で明和高校、津島高校、半田高校、刈谷高校といった、愛知県立の公立高校の中高一貫化について、開校時期や進学実績、中学受験に対する影響に関する考察をご紹介しました。

今回は2022年7月26日に公開された続報についてまとめましたのでご紹介します。
なお、公式発表の内容は以下のページから確認できます。
今回追加された内容は、
- 併設校から進学可能な学科
- 中学で募集するクラス数
- 進学可能な地域
- 入学試験の内容(概要)
- 教育方針
- 今後の予定
です。
併設校から進学可能な学科
明和高校、津島高校、半田高校、刈谷高校の4校から進学可能な学科は以下の予定となる事が公表されました。
- 明和高校
→普通科・音楽科 - 津島高校
→国際探究科 - 半田高校
→普通科 - 刈谷高校
→普通科
津島高校の「国際探究科」は、現在普通科に設置されている「国際理解コース」を科として改編することで設置するようです。
なお、この国際探究科は、高校からの合流をどうするかは今後検討する、としているため、もしかしたら中学からの専用コースとなる可能性もあります。
中学で募集するクラス数
募集するクラス数も推測されていた通り各校2クラスとなる方針が発表されました。
1クラス40人が想定されているようなので、80人程度が1校の募集人数となりそうです。
なお、明和高校の音楽科のみ、5-10人程度の少人数募集となる予定で、この音楽科の人員を上記2クラスに入れるかどうかは検討中とされています。
この部分は詳細が分からず、
- [普通科40人]+[普通科40人]+[音楽科]
- [普通科40人]+[普通科+音楽科で40人]
- [普通科40人]+[音楽科]
のどのパターンなのかハッキリしません。
恐らく、上の2つのどちらかだとは思いますが、明和高校は今回最も注目されている学校なので気になるところです。
なお、中日新聞の報道によると、
高校入試は引き続き実施し、他の中学校からの生徒も六〜八学級分、選抜する。
引用元:2022年7月27日中日新聞「明和、津島、半田、刈谷の県立高 中高一貫教育の導入を正式決定」より抜粋
とされており、高校からの募集は引き続き実施されることは確定のようですが、今回の中学校からの人員分だけ募集人数が減るかどうかは微妙な表現になっています。
(1学級40人として、6-8学級だと最小で240人となるため、減る可能性は残っています)
進学可能な地域
個人的に注目していた通学区域の部分ですが、結果としては
高校の通学区域に合わせる
という事で決着したようです。
つまり、
- 明和高校普通科
→尾張地区 - 明和高校音楽科
→県内全域 - 津島高校
→県内全域 - 半田高校
→尾張学区 - 刈谷高校
→三河学区(大府市、豊明市、東浦町含む)
となる、という事です。
なお、中日新聞の報道では、
県外からの小学生が受けられる「県外枠」を設けるかどうかは今後検討する。
引用元:2022年7月27日中日新聞「明和、津島、半田、刈谷の県立高 中高一貫教育の導入を正式決定」より抜粋
とされており、これが実現すると上記の通学区域を分ける意味が薄れてしまうと思うので、そのあたりの整合性はどのようにしていくのか気になるところです。
入学試験の内容
ここは非常に重要なところで、どのような形式となるか注目していましたが、基本的には他県の公立中高一貫校と似たような形式となるようです。
選考は以下の3種類とされています。
- 調査書
- 適性検査
- 面接
調査書について
いわゆる、「小学校の通知表」をどのように評価するか、については、
- 対象となるのは5年生・6年生の内容
- 点数化はしない
- 入学者決定の際の参考とする
という方針が発表されました。
具体的には
小学校5・6年生の内容を、点数化はせず、入学者決定の際の参考として見ます。
引用元:愛知県ホームページ「【知事会見】併設型中高一貫教育の第一次導入校が決まりました」より抜粋
とされており、この内容から考えると
調査書(通知表)の重要度はそこまで高くない
と解釈できるのではないでしょうか。
6年生だけでなく5年生の内容も入るということで、この公立中高一貫校を受験するのであれば2-3年前から考えておく必要がありそうです。
また、「抽選の導入の有無は、今後検討」という記載もあり、かつての愛知教育大学附属名古屋中学校のように抽選が導入される可能性も残されているのが気になるところですね。
(※令和4年度から愛知教育大学附属名古屋中学校は抽選が廃止される)
適性検査
適性検査は、
- 小学校学習指導要領の範囲内
- 思考力、判断力、表現力、課題解決力等を総合的に測る
- 適性検査のサンプル問題は、2023 年度に公表する予定
とされました。
具体的には
出題は、小学校学習指導要領の範囲内とし、思考力、判断力、表現力、課題解決力等を総合的に測ります。
なお、適性検査のサンプル問題は、2023年度に公表する予定です。引用元:愛知県ホームページ「【知事会見】併設型中高一貫教育の第一次導入校が決まりました」より抜粋
とされています。
また、中日新聞の報道では若干表現が異なっており、
付属中学入学時に、教科ごとの学力検査ではなく、適性検査を課す。文書や図表から自分の意見をまとめるなどの形式で、総合的に思考力、判断力、表現力などを測る。
引用元:2022年7月27日中日新聞「明和、津島、半田、刈谷の県立高 中高一貫教育の導入を正式決定」より抜粋
となっています。
以上の内容から考えると
適性検査(学力試験)他県の公立中高一貫校と似たような形式
と解釈できるのではないでしょうか。
面接
面接については、
中高の6年間学び続ける意欲や志望動機、適性、コミュニケーション能力などを見ます。
引用元:愛知県ホームページ「【知事会見】併設型中高一貫教育の第一次導入校が決まりました」より抜粋
とされており、特に特殊な面接を行う事はなさそうです。
教育方針
ここはあまり深い内容までは切り込んでいませんが、
- 探究学習を重視
- 探究を深めるための先取りするが大学受験対策のためだけの先取りはしない
- 教員は、中学校教員と、中学校の免許をもつ高等学校教員を配置
とされています。
探究学習を重視
基本的には、大学受験のための勉強を重視するのではない、という方針があるようです。
各校、探究学習の内容は異なっているようで、以下のようになっています。
明和・半田・刈谷高等学校普通科
要約すると、「スーパーサイエンスハイスクール」に内容に中学校から触れていく、ということでしょうか。
大学や企業と連携して、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)の探究的な学びを中心に、幅広く中学校段階から探究学習に取り組みます。
引用元:愛知県ホームページ「【知事会見】併設型中高一貫教育の第一次導入校が決まりました」より抜粋
津島高等学校国際探究科
要約すると、中学校段階から国際交流を重視し、国際的に通用する大学入学資格(IB資格)を取得を見据えた教育を行う、ということでしょうか。
国際理解コースで取り組んでいる国際交流活動に、中学校段階から取り組みます。高等学校の学科を国際探究科に学科改編するなどし、国際バカロレア(※)の趣旨を踏まえた探究的な学びを実践した後、段階的に国際バカロレアの導入を目指します。
※国際バカロレア
課題論文、批判的思考の探究等の特色的なカリキュラム、双方向・協働型授業により、世界150 以上の国・地域の5,000 校以上で実施。
高校レベルのディプロマ・プログラム(DP)で、国際的に通用する大学入学資格(IB資格)を取得し、その成績によって世界の大学への入学が可能となる。引用元:愛知県ホームページ「【知事会見】併設型中高一貫教育の第一次導入校が決まりました」より抜粋
通常の学習について
前述の通り、”大学受験のための勉強を重視するのではない”ということで、大学受験のため先取り教育はしない方針のようですが、この表現からすると「体系数学」のような6ヶ年教育を活かした教材は使われる可能性も残されていると感じます。
ただ、後述の「教員の確保をどうするか?」という問題もあるので、本当に6ヶ年教育を活かした学習を実現できるかは未知数だと感じています。
中学校段階では、少人数・習熟度別指導により、基礎基本の定着を図りつつ、中学校と関連の深い高等学校の学習内容に中学校段階からしっかりと触れることで、より深い学びに取り組みます。
※探究を深めるための先取りは行いますが、大学受験対策のためだけに授業進度を早めることはしません。引用元:愛知県ホームページ「【知事会見】併設型中高一貫教育の第一次導入校が決まりました」より抜粋
教員について
教員は「中学校教員と、中学校の免許をもつ高等学校教員を配置」とされています。
なお、検討部会の段階でNHKが報道した以下の内容の通り、中高一貫校向けの採用枠を設けるようです。
また教員が不足している現状を踏まえ、新たに中高一貫校向けの採用枠を設ける方針も明らかにしました。
引用元:NHK東海NEWS WEB「https://www3.nhk.or.jp/tokai-news/20220714/3000023690.htmlより抜粋
中高一貫校の6ヶ年教育はノウハウや経験がないと難しい部分も多いため、経験者をどの程度集められるか、というところが重要になってくるのですが、私立や他県中高一貫公立校から人材を引っ張ってくるハードルは相当高いように感じます。
この部分をどうカバーするかがこの公立中高一貫校の成否を分けるポイントになりそうです。
今後の予定
1次導入校のスケジュール
以下のように進んでいくようです。※会議のみの記載は省略
○2022年8月~10月
- 第一次導入校の詳細な内容について検討
- 第二次以降の導入候補校について検討
○2022年11月~12月
- 「中高一貫教育導入方針(案)」パブリック・コメントの実施
- 「中高一貫教育導入方針(第二次以降の導入候補校を含む)」決定・公表
パブリック・コメントとは、出された案に対して、市民/県民の意見を聞き参考にする制度の事で、公的な事業の場合は行われる事が多いです。
パブコメで出した意見は県の考え方等の回答があるので、気になる部分がある場合は遠慮せずに意見を出すと良いと思います。
分かりやすいところで言えば、毎年名古屋市の予算はパブリック・コメントを募集していて、「なぜ住民票の写しがコンビニで交付できるようにならないのか?」といった意見に対して回答していたりします。
例で出した住民票の写しのコンビニで交付は「実現できていなくてすみません」といった全く意味のない回答しか来ませんが…
第二次導入校について
上記の通り、今年の検討で第二次以降の導入候補校の検討がなされることになっています。
そこで候補例として挙げられているのは
- SSH(スーパーサイエンスハイスクール)実施校
- グローバル関係で探究学習を重視する学校
- 地域連携を一層進める中高一貫校
- 不登校や外国にルーツにある子などが6年間学べる中高一貫校
の4つです。
なお、現在の愛知県内公立のSSH実施校は
- 旭丘高校
- 一宮高校
- 岡崎高校
- 向陽高校※市立
- 時習館高校
- 豊田西高校
となっており、どの学校も偏差値が高く、難関とされている学校です。
特に旭丘高校、一宮高校、岡崎高校あたりが対象となった場合は影響が大きそうな感じです。
ただ、SSH以外の3項目は、今回の施策の方向性としてエリート志向を否定している以上、より重視される項目だと思うので、第二次導入校でSSH実施校のような上位校が選ばれるのは1-2校ではないかと思います。
まとめ
まとめると
- 進学可能なのは各校の普通科・音楽科・国際探究科
- 中学で募集するクラス数は2クラス80人程度
- 進学可能な地域は高校入試で使われている区分に準ずるが今後は県外募集も含めて検討
- 入学試験の内容は他県の中高一貫公立校と似たようなもの
- 具体的な試験のサンプルは2023年度に公表する予定
- 教育の方向性として「大学受験のための先取りはしない」事が明言された
- 具体的な内容は22年9月より検討を進め、2022年11月~12月にパブコメを通じて発表される
という感じです。
個人的な感想としては、今回の中高一貫公立の検討はかなり重要な内容にも関わらず、検討会議がメンバーを含めて全て非公表で行われていることに大きな疑問を感じました。
教育分野は将来を大きく左右する重要な事柄なので、検討過程を含めて市民に公表すべき内容ではないかと思います。
内容を知られるとよろしくない発言が飛び交うような検討だったのでしょうか…
また、結局は他県の中高一貫公立校の内容と似たような傾向になっているのは少し残念に感じます。
せっかくなら「社会人経験が豊富な教員を一定数採用する」といったような他県には見られない施策を入れてほしかったですね。
今後、どのような動きを見せるか注目です。
続報があればまたご紹介します。
===
以上、今回は
明和高校中高一貫化の続報
についてご紹介しました。
皆様の参考になれば幸いです。
コメント