今回は久々に公立高校受験の話題です。
以前、以下のエントリーで愛知県の高校入試改革の方向性がある程度定まったというお話をご紹介しました。

ここで大きな変更点としては、
- 試験回数を2回から1回にする
- 推薦選抜の時期を早める
- AO入試的な特色選抜を導入する
- 一般入試で面接を実施するか否かは高校の裁量になる
といった感じでしたが、「詳細は入学者選抜方法協議会議で決める」とされていました。
今回はこの部分に関して情報が更新されていましたのでご紹介します。
なお、この改革の対象となるのは、2023年の春に入学する生徒、つまり、
2007年・平成19年生まれ
(2007年4月2日~2008年4月2日生まれ)
となるので、直近の2021年の3月頃に受験する生徒は従来の方式なのでご注意ください。
※2021年11月にさらなる続報が出たので情報を更新しています
今回の内容をざっくりとまとめると以下のようになります。
- 合否判定のルールが変更になりシンプル化される
- 上位校は内申点よりも入試得点重視の傾向となる可能性が高い
- マークシート方式が採用され、模試や受験対策に変化が出る
- 特色選抜の定員は全体の20%を最大として設定する
- 内申点重視が変化する事により、人気学区のさらなる需要増、中学受験環境の変化が起こる可能性が出てくる
今回新たに判明した変更点
今回の変更点については以下の報告書をベースに書いていますので、詳細はこちらをご確認いただければと思います。
新たに判明した変更点は以下の通りです。
- 合否判定のAグループ/Bグループの区別をつけなくなる
- 合否判定(順位決め)の際に使用する「調査書の評定得点と学力検査合計得点の比率」の新パターンを追加
- マークシート方式が採用される
- 特色選抜は定員の20%を最大とする
多くの受験生に影響するのは上の3つで、結構大きな変更点になります。
特に「調査書の評定得点と学力検査合計得点の比率の新パターン」は今まで全く触れられていなかったところですし、マークシート方式採用も一切言及されていなかったので驚きました。
合否判定のAグループ/Bグループの区別をつけなくなる
これは合否判定が理解しづらい最も大きな理由になっていたもので、これが廃止されるとのことです。
現行ルールの詳細はこちらのエントリーで説明していますが、以下のような変化が起こる、ということです。
報告書では「実質的に合否判定には影響していなかった」と書いてありますが、Aグループ選抜の時点で6-7割が合格するという話であり、Aグループの計算とBグループの計算は厳密には内申点の比率等が異なるので影響は出そうな気がするのですが、どうなんでしょうか。
ただ、新ルールの詳細な手順が明かされていないため、グループ分けをしないだけで、やっていることは変えない、という可能性もあるので具体的な入試要項が出たら確認したいところです。
合否判定の新パターン追加
上記の図でも触れていますが、現行ルールの場合、合否判定の一部で、学校が計算方法を3パターンから選ぶ事になっています。
今回は2パターンを追加して、全5パターンから選ぶ、という変更が示されました。
- 調査書(9教科x5段階)の評定合計を2倍にした数値+学力検査の合計点
- 調査書(9教科x5段階)の評定合計を2倍にした数値x1.5倍+学力検査の合計点
- 調査書(9教科x5段階)の評定合計を2倍にした数値+学力検査の合計点x1.5倍
- 調査書(9教科x5段階)の評定合計を2倍にした数値x2倍+学力検査の合計点
- 調査書(9教科x5段階)の評定合計を2倍にした数値+学力検査の合計点x2倍
つまり、より内申点重視のパターン(Ⅳ)とより入学試験重視のパターン(Ⅴ)が追加された事になります。
これは今まで触れられていなかったポイントであり、結構影響が大きい変更でもあります。
マークシート方式の採用※追加
これは2021年11月下旬に突然明らかになったもので、私も驚きました。
もともと、入試改革の検討会では
「1回の試験で2校受験するのは記述式問題の採点基準の公平性で問題があるのでは?」
と指摘されていましたが、全面的にマークシート方式を導入することで公平性を確保することにしたようです。
下記中日新聞の記事でも触れられていますが、マークシート方式は思考の流れを表現することが難しいので異論は出ると思います。
その一方で、「漢字の止め、はねで減点があるので対策をしていた」という時代に合致していないような実態もあったようで、一長一短ではあると思います。

とはいえ、マークシート方式は慣れが必要であり、模試や試験対策も変化が出ると思うので、そのあたりの情報収集や対策が重要になってくると思います。
特色選抜は定員の20%を最大とする
まず特色選抜の対象校については以下の定義がなされています。
特色選抜を実施する高等学校・学科は、① 職業学 農業や工業を始めとする全ての科、② 理数・体育・外国語・国際教養に関する学科、総合学科、コースを設置する普通科、特色ある教育課程を有する普通科、③ 地域に根差し、地域貢献を特色とする高等学校とした。また、特色選抜を実施するかどうかは、高等学校長が決定することとした。
まだ実施校が不明なためどれだけの影響が出るか不明ですが、この特色選抜は推薦枠とは別に最大で定員の20%まで設定できる事となっています。
つまり、特色選抜実施校における一般入試の最小値が以下の数値になる可能性が出てきた、という事になります。
- 普通科:65%
(普通科の推薦は最大で15%で、それに加え特色選抜が最大20%) - 専門学科:35%
(専門学科の推薦は最大で45%で、それに加え特色選抜が特色選抜が最大20%)
志望校が実施校であるか否かや、専門学科であるか否かにより影響の大小が変わってくると思いますが、それなりに影響のありそうな数字です。
なお、特色選抜の入学試験については、
- 面接を必ず行う
- 作文、基礎学力検査、プレゼンテーション、実技検査の中から、学科等の特色を踏まえて実施校が一つを選び実施
といった形になるようです。
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変更の影響
入学試験に対する影響
やはり合否判定のパターンが追加される影響が大きな変化を生むのではないでしょうか。
報告書では以下のような言及がなされていますが、特に受験生の立場で見ると影響は大きいと感じるのではないでしょうか。
なお、これらの方式を適用することによって、合否に関わる影響を受ける可能性があるのは、合否ライン付近に位置する受検生のみである。
まだ具体的にどの学校がどのパターンを選ぶか不明ですが、過去の経緯を考えると、上位校は入学試験重視のパターンⅤを選ぶ可能性が高いと思われます。
各パターンの内申点と入試得点の比率は以下の通りです。
上位校が選ぶであろうパターンⅤについては、内申点の比率が3割を切っており、これまで人気学区で見られた熾烈な内申点争いがより緩和される方向になると思われます。
よく噂で耳にする「先生の誕生日にはお祝いの言葉を言ってでも気に入られる必要がある」といったようなストレスのかかる状況に変化が起こりそうなのは良い傾向だと感じます。
その他の影響
少し飛躍した予想にはなりますが、もし予想通り上位校がパターンⅤを選択してきた場合、今回の変更により、さらに人気学区の人気が高まるのではないかと考えています。
理由としては
- 人気学区の熾烈な内申点争いの影響(懸念)が低下する
- 内申点重視である公立高校の入試方針を嫌って中学受験を選択してきた方々に公立高校受験という選択肢が生まれる
- 内申点争いを大きく気にしなくて良いならば、環境の良い(学力の高い)学区を選びたい
という流れが生まれるのではないか、というのが挙げられます。
特に、以下にご紹介した通り名古屋の高校は公立王国と言われているだけあって、一般入試における公立高校の実績は非常に良いです。

そうなってくると、指定校推薦枠を狙わないのであれば、学費のかからない公立中学→公立高校というルートを選ぶ流れは加速していくように感じます。
そういう意味では名古屋地区における中学受験に対する影響も出てくる可能性はありますね。
今回は以上です。
次回は今年の高校入試における内申点の目安等についてまとめる予定です。
皆様の参考になれば幸いです。
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