今日は愛知県の公立高校入試のルール変更の方向性が見えてきましたのでそのご紹介です。
以前の投稿で、
「2023年の春入学を対象とした入試について、ルールを変更することを検討している」
というお話を書きましたが、その後検討会議の結果が公表され、方向性が見えてきましたのでご紹介します。
さらに情報更新があり、新たに発表された合格判定方法の変更内容や試験と内申書の比重の新パターンについてまとめました

なお、この件の検討内容については県のホームページで公開されており、議事録等も見ることができるので、興味があれば詳細はこちらから確認できます。
大きな変更点を先にまとめると、
- 一般試験が一発勝負に変更
- 推薦は学力試験を廃止
という2点がありました。
その他小さな変更点や不変なものをざっくりとまとめると、以下のような内容でした。
- 一般選抜の2校志願は変わらない
- 一般入試の面接の有無は高校が決められるようにする
- 試験と内申書の比重は高校が柔軟に選べるようにすることを目指す
- 一般試験の合格発表日程は早める
- AO入試的な試験の導入を目指す
- 学区、群、グループはのルールは変更しない
- 外国人生徒及び中国帰国生徒は試験を早期化、帰国生は実施校の拡大を検討
- 変更点の詳細は入学者選抜方法協議会議で検討
詳細は下の「結果まとめ」をご覧ください。
いつから変わるのか
具体的には、
2007年・平成19年生まれ
(2007年4月2日~2008年4月2日生まれ)
の学年の入試からルールが変更になる可能性が高いです。
もともとこの検討は2023年の春入学を対象とした入試からの変更が前提となっているため、上記の学年からの変更の可能性が非常に高いです。
ただ、まだ決定ではないですし、検討が遅れればズレる可能性があるので、「可能性が高い」という表現にさせていただきました。
検討会議の結果まとめ
基本的には、
「愛知県公立高等学校入学者選抜制度の改善に関する検討会議(第3回)の結果」
にまとめられれている通りですが、概ね内容については第2回会議で合意に至っていた内容となります。
以下に内容をご紹介します。
一般選抜の2校志願は変わらない
原文では以下の文言となっています。
一般選抜において2校に志願できることについては、現行どおりとする。
これは検討段階では1校のみ志願できるようにしては、という意見も散見されていたのですが、現行のまま2校志願を継続する事となりました。
第2回会議の議事録を見ると、
- 2校に志願できる制度は30年以上続いており、県民に定着していることから、現状では最も理にかなっている
- 1校志願とすると、高等学校によっては欠員が生じたり、欠員が増えたりするおそれがある
という理由により決まったようです。
個人的には
「県民に定着している=現状では最も理にかなっている」
というのはちょっと疑問で、ちょっと責任回避的なイメージを持ってしまうのですが、2項目目の欠員の問題もあると思うので、維持するのは妥当だと感じました。
学力検査は1回に変更、科目は変わらない
原文では以下の文言となっています。
一般選抜における学力検査については、志願者が第1志望校と第2志望校のそれぞれで受検している現行の方式を改め、1回とする。各校において校内順位を決定する際には、その学力検査の成績を資料として使用する。出題教科は、現行どおり国語、社会、数学、理科、外国語(英語)とする。
つまり、現状ではAグループとBグループの学校で別々に学力試験を行っていたものが、試験を1回のみにし、試験結果情報を共有することで校内順位を決定する方式に変わるようです。
これは結構大きい変更で、これまでは1回目の試験で失敗しても2回目の試験がありましたが、
学力試験は完全一発勝負
という形に変更となります。
もちろん、第2回会議の議事録を見ると、上記の一発勝負による精神的負荷も言及されてはいましたが、
- 学力検査を1回減らす日程的な負担軽減が大多数の受検生にとってメリットがある
- 同じようなで同じような学力検査を2回行っている合理性は高くない
という判断をしたようです。
個人的には、人生にとって結構大きな入試というイベントで
「2回試験を受けるのは面倒だからイヤ」
と思うのか微妙に感じました。
だったら大学入試はどうなんだ、という話になりますからね。
また、重要なポイントとしては、現状の検討の前提として、
第一志望校のテスト結果を第二志望校に送信する
という方式で試験回数を減らす事としているため、記述問題の採点基準等が各校で異なるケースもあり、そのあたりは気になるところです。
とにかく、一発勝負になる可能性が高いので、模試等で試験環境にしっかりと慣れておく重要性が、これまで以上に高くなりそうです。
一般入試の面接の有無は高校が決められるようにする
原文では以下の文言となっています。
一般選抜における面接の有無については、各高等学校の裁量とする。
これはそのまま、面接を重視する学校、しない学校がそれぞれあるので、学校の判断に任せましょう、という変更ですね。
第2回会議の議事録でも言及されている通り、試験が1発勝負となった関係から、第二志望校が面接を実施しない場合、学力試験も第二志望校で行われないため、第二志望校の試験を一度も受けることなく第二志望校に行くことになるという奇妙な状況は生まれそうです。
試験と内申書の比重は高校が柔軟に選べるようにすることを目指す
原文では以下の文言となっています。
一般選抜における校内順位の決定方式については、各高等学校・学科の特色をより生かすことができるようにする。
つまり、内申点と試験の比重を現行の3種類から選ぶのではなく、各学校がある程度の裁量を持って選べるようにする変更を目指すという内容です。
なぜ「目指す」という表現になっているかと言うと、この項目(項目番号4)は原文の項目番号12において、
新しい制度の実施時期は令和5年度入学者選抜からとされているが、上記4及び7については、上記協議会議における検討状況等を考慮し、柔軟に取り扱うことを可能とする。
引用元: 愛知県公立高等学校入学者選抜制度の改善に関する検討会議(第3回)の結果より
とされているためで、要するに
「変える気はあるけど複雑な問題があるから詳細検討が難航するだろう」
という事で、2023年から変えることが難しい可能性もあるため、このような表記になっているようです。
このあたりの議論は第三回会議の議事録を見ると書いてあります。
一般試験の合格発表日程は早める
原文では以下の文言となっています。
一般選抜の合格者発表日については、現行よりも早めるように努める。
これはどちらかと言うと学校側の
「年度末は卒業と新年度の準備が大変だから色々と前倒したい」
という意向があるようですが、欠員が生じた等で第2次選抜を行う場合は3月27日頃まで試験を行っているケースもあるそうなので、生徒側にもメリットはあると思います。
(ギリギリまで高校が決まらないのは精神的にキツイですよね)
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推薦選抜は日程を早めて学力試験は廃止する
原文では以下の文言となっています。
推薦選抜については、一般選抜の日程の中で実施している現行の日程を改め、早い時期に実施する。
推薦選抜の志願者には学力検査を課さないこととする。
これも推薦利用者には大きな変更で、
推薦試験には学力試験はなくなります。
これについては第2回会議の議事録を見るとかなり議論が白熱した項目だったようですが、
「学力に偏らない多様な観点から人物を評価するという推薦選抜本来の趣旨」
を重視し、また、推薦を受けるには学力などの実績を要するという事から、試験は行わないという方向に着地したようです。
AO入試的な試験の導入を目指す
原文では以下の文言となっています。
中学校長の推薦を必要としない、高等学校・学科の特色を生かした「特色選抜」を新たに設ける。
これは第2回会議の議事録の結果を要約すると、
「約4割の都道府県が採用しているし、愛知県もやろう」
という理由になっています。
自己推薦型のAO入試的な試験は現代では当たり前なので、理由はどうあれ導入するのは良いと感じました。
なお、この項目は「試験と内申書の比重」と同様に検討課題が多いという理由で、
新しい制度の実施時期は令和5年度入学者選抜からとされているが、上記4及び7については、上記協議会議における検討状況等を考慮し、柔軟に取り扱うことを可能とする。
の対象となっているため、2023年から実施されるかは不明瞭な項目です。
学区、群、グループはのルールは変更しない
原文では以下の文言となっています。
普通科における学区については、現行どおり尾張・三河の2学区とする。
また、群及びグループ分けについては、当面は現行どおりとし、新しい入学者選抜制度の実施後に、時宜を得て検討する。
これは変更なしでした。
学区の1本化や細分化は通学の問題(=遠い場所にしか受からなかった)や、自由度の縮小(=さらに細分化すると自由度が下がる)が懸念されるため現行通りとなったようです。
群及びグループ分けについては
- 現行のまま更に数年実施することにより、新制度のもとで現行の群・グループ分けの成果と課題を十分に検証することが可能になる
- 群・グループ分けを専門的に扱う会議を設置し、時間をかけて検討することが適切である
- 現行の群・グループ分けは平成29年度に変更したばかりであるので、志願校の組み合わせがまた変わって、受検生や中学校に大きな負担をかける
という理由で現行通りとなったようです。
個人的にはもっと自由度が高くて良いと思っており、上記理由もあまり意味がある内容とは思えず、「大人の事情」を感じさせる決着となりました。
確かに、旭丘高校と明和高校を併願できるようになるなどの自由度が増すと、人気校とそうでない学校の格差が拡大するなど、学校サイドから見れば色々と面倒はあるでしょうが、生徒側から見るとメリットは大きいですし、現状の公立高校入試が分かりづらい原因の1つがこの群・グループにあると感じているので、このような結果になった事は残念です。
外国人生徒及び中国帰国生徒は試験を早期化、帰国生は実施校の拡大を検討
原文ではそれぞれ以下の文言となっています。
外国人生徒及び中国帰国生徒等にかかる入学者選抜については、一般選抜の日程の中で実施している現行の日程を改め、早い時期に実施する。
海外帰国生徒にかかる入学者選抜については、現行どおり一般選抜の日程の中で実施するが、実施校の拡大を検討する。
これは、
- 外国人生徒が全日制の公立高等学校を受検する機会を増やす
- 海外帰国生徒選抜の実施校が6校でしかも進学校ばかりなので柔軟に対応できるにする
という狙いがあるようです。
変更点の詳細は入学者選抜方法協議会議で検討する
原文では以下の文言となっています。
新しい制度の詳細については、入学者選抜方法協議会議において慎重に検討する。
要は、変更点の細かいことは別の会議(入学者選抜方法協議会議)で検討する、という事で、上記の方針に基づき詳細の検討が行われるようです。
この「入学者選抜方法協議会議」の結果出てきた詳細についても、情報が公開されたらまたご紹介する予定です。
今回は以上です。
皆様の参考になれば幸いです。
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