前回に引き続き、
「名古屋において中学受験をするのはメジャーではない」
というイメージは本当なのか統計データを使って確認していきます。
2回目の今回は学校数の比較をメインに、中学校の生徒数について、
- 国立+私立に通う生徒数
- 国立+私立に通う生徒の割合
を都道府県別と政令指定都市別でランキングを作り、愛知県、名古屋市の位置づけを見てみます。
入学生徒数の比較
学校数比較と似ていますが、入学生徒数はどうなっているのか調べました。
なお、今回のデータは、「入学した生徒」を見るために、各年度の1年生の生徒数のみのデータを使用しています。
また、都道府県別データは2021年のデータですが、政令指定都市のデータは2020年が最新のため、2020年のデータを使用しています。
都道府県別
国立+私立の入学生徒数を都道府県別で見ると以下のようになり、
愛知県は3,699人で全国5位
という結果になりました。
引用元:令和3年学校基本調査統計データ「学年別生徒数」より作成
学校数と異なり、都市規模相応の生徒数、といったイメージになっています。
やはり東京の人数はすごいですね…
政令指定都市別
国立+私立の入学生徒数を政令指定都市別で見ると以下のようになり、
名古屋市は2,787人で4位
という結果になりました。
引用元:令和2年学校基本調査統計データ「政令指定都市別 学年別生徒数」より作成
都道府県のランキングよりも順位が1つ上昇し、4位になっています。
こちらも、東京23区が圧倒的になっていますが、名古屋市より上位なのは横浜市と大阪市なので、人口数を考えれば納得できる結果です。
入学生徒数の割合の比較
上記でも少し触れていますが、単純な生徒数は人口数に影響を受けるので、国立+私立の入学生徒数の割合も出してみました。
これを見ると、いわゆる私立志向が高いか低いかを見ることができる、つまり
「中学入試は珍しい選択肢なのか?」という事を客観的に見ることができると思います。
都道府県別
国立+私立の入学生徒数割合を都道府県別で見ると以下のようになり、
愛知県は5.3%で全国24位
という結果になりました。
平均すると40人のクラスで2人ぐらいが国立・私立に進学する、といった感じです。
他の都道府県単位と比較すると、中学受験志向はそこまで高くないように見えます。
引用元:令和3年学校基本調査統計データ「学年別生徒数」より作成
政令指定都市別
国立+私立の入学生徒数割合を政令指定都市別で見ると以下のようになり、
名古屋市は14.1%で7位
という結果になりました。
イメージ的には40人のクラスで5-6人が国立・私立に進学する、といった感じです。
もちろん、平均なので地区によって濃淡あると思いますが、平均するとそれぐらいの比率、という事です。
都道府県単位と比べると、中学受験を選択している生徒の比率が高くなっていますが、都市規模を考えればそこまで多い、という感じはしません。
引用元:令和2年学校基本調査統計データ「政令指定都市別 学年別生徒数」より作成
やはり比較すると東京都の3割超という数字の異常性がはっきりと見え、さらに恐ろしいことに、東京都の場合は受験勉強が必須の中高一貫校公立校(都立中)がそれなりの数が存在しますが、この数字には入っていないので、中学受験を選択する割合はもっと高いと思われます。
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最近の受験志向の傾向
上記のランキングだけだと面白くないので、ここ10年程度の入学生徒数の推移から、最近の愛知県/名古屋市の中学受験志向の傾向を見てみようと思います。
生徒数の推移
愛知県、名古屋市それぞれの、国立+私立中学の入学者数(中1生徒数)の推移を出してみました。
もちろん、国立・私立の中学校には定員があるので、これだけで受験志向を判断することはできないと思いますが、一つの指標にはなると思います。
愛知県の推移
国立+私立の入学生徒数を男女別に2011年から2021年まで見ると以下のようになりました。
引用元:2011年から2021年の学校基本調査統計データより作成
女子の方が入学生徒数は多いですが、減少傾向で、男子は絶対数は女子より少ないものの増加傾向です。
なお、同期間の全国合計値だと、男子は-2%、女子は-7%であることを考えれば、男子の中学受験志向の高まりを感じます。
名古屋市の推移
国立+私立の入学生徒数を男女別に2011年から2020年まで見ると以下のようになりました。
引用元:2011年から2020年の学校基本調査統計データより作成
愛知県と傾向は似ていますが、名古屋市の場合、女子の減少傾向が微増傾向に変わりつつあるのが違いです。
また、政令指定都市+23区の合計値だと、男子が+3%、女子が-4%となっているので、他の政令指定都市と比較して、男子は中学受験志向が高まっており、女子は下がっている、という傾向が見えます。
生徒数割合の推移
愛知県、名古屋市それぞれの、国立+私立中学に入学者する生徒数(中1生徒数)の割合推移を出してみました。
愛知県の推移
国立+私立の入学生徒数割合を男女別に2011年から2021年まで見ると以下のようになりました。
引用元:2011年から2021年の学校基本調査統計データより作成
愛知県は上記の期間で中1の生徒数が減少(男子は-6%、女子は-7%)している反面、既述の通り生徒数はそこまで減少していないので、生徒の割合としては上記の通り横ばい~上昇傾向です。
ただ、そこまで大きな変動でもないので、「私立の中学校を選択する人が増えたな」という実感は無いのではないでしょうか。
名古屋市の推移
国立+私立の入学生徒数を男女別に2011年から2020年まで見ると以下のようになりました。
引用元:2011年から2020年の学校基本調査統計データより作成
愛知県と傾向はほぼ同様で、男子で私立中学に入学する割合が増加しています。
まとめ
結局私立中学に入るのはメジャーな選択肢なのか
上記の結果から、愛知県と名古屋市の私立・国立中の状況以下のことが分かりました。
- 学校数の比率としては愛知県で5%、名古屋市で10%の学校が私立・国立である
- 学校数は他県と比べて多いわけではなく、比率も上位というではない
- 生徒数の比率は愛知県で5%、名古屋市で14%
- 私立・国立中を選ぶ生徒の絶対数は全国で見れば多い方だが、生徒数の割合で見れば上位というわけではない
- 特に男子は私立・国立中の生徒数とその割合が上昇傾向で、需要が増している
繰り返しにはなりますが、小6が40人学級だとすると、平均してクラスに2人(名古屋市は5-6人)という割合なので、
統計データ上も中学受験はメジャーな選択肢とは言えない
ということが確認できました。
私立・国立を選択する割合が高い事は良いことなのか?
前回、少し触れましたが、この「中学受験志向が高い」というのは良いことなのでしょうか。
価値観は人それぞれなので、判断が難しいところではありますが、下記の大学進学率データを見ると、愛知県は私立・国立中学入学率は全国24位ですが、大学進学率はトップ10に入っており、他にも私立中学入学率の低い県がトップ10入りしています。
引用元:令和3年学校基本調査統計データ「学年別生徒数」および「状況別卒業者数」より作成
もちろん、大学進学が全てではないですが、少なくとも愛知県においては、私立中の選択肢が少ない事が大学進学率に影響していることはないと言えます。
さらに言えば、以前書いた以下の記事でもまとめていますが、愛知県の公立高校は中高一貫の私立学校と比較しても同等かそれ以上の実績を残しています。

もちろん、東海高校のように、私立でも全国1位の医学部進学実績を残しているような学校もあります。
つまり、
愛知県(名古屋市)は費用のかかる私立を選択しなくても高い実績を残している学校を選択でき、さらに高校受験を望まない人には私立で実績を残している学校も選択可能な環境が揃っている
と言えます。
このことから、
愛知県、名古屋市においては中学受験はメジャーな選択肢ではないが、それが悪い方向に作用しておらず、幅広い選択肢を生んでいる良い環境である
と、考えることができるのではないでしょうか。
今回は以上です。
皆様の参考になれば幸いです。
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