2021年4月25日に名古屋市長が再選され、再度4年間は河村市長のもとで市政が運営されていくこととなります。
以前も以下の記事の通り、河村市長の最新のマニフェストの一部はご紹介しましたが、今日はこの河村市長の最新のマニフェストの子育てに関わる部分を抜き出して分析することで、子育てに関わる市政の今後の方向性を見てみたいと思います。

マニフェストが触れている子育てに関わるもの
マニフェスト全文
マニフェスト全文は以下のページから確認できますので、時間があれば是非どうぞ。

ただ、これは長大で読むのが大変なので、以下に興味深いものを抜き出してみました
なお、原文を抜粋したものについては本投稿の最下部に参考として記載しています。
興味深い施策
ほとんどが構想段階ですが、一部は予算化されているものもありました。
小中学生へのタブレット配布
項目[1-(5)]や[5-1-(7)]で触れられており、名古屋市立の小中学校に通う全生徒に対してタブレットを配布するとされています。
こちらについては、今回のマニフェスト以前より計画があり、実際[5-1-(7)]では、「学習ドリルや学習共有ソフトなどは予算化済」となっており、実際に動き出している様子が伺えます。
また、[5-1-(7)]では他にも「学校でのタブレット利活用を支援するスタッフも十分に配置」となっており、IT化が遅れており、ITを使いこなす人材が非常に不足している公立小中学校に対する配慮も考えられています。
なお、少し古いデータですが愛知県は以下の通り生徒に対する教育用コンピュータの配備がかなり遅れている県でもあり、上記取り組みによって巻き返してほしいところです。
ただ、こちらについてはつい先日、以下のように非常に気になるニュースも入ってきています。

要約すると、
- 配布したタブレットの使用状況や操作履歴をセンターサーバーに記録していた
- その記録するという方針を保護者に伝えていなかった
- 市の条例では個人情報を取得する際には利用目的を明らかにすることが定められており条例違反状態だった
- 上記対応のためタブレット端末の使用を一時停止することとなった
といったものです。
恐らくは、そこまで利用停止が長期化することは無いかと思いますが、少し気になるところです。
補助の拡充
項目[5-2-(18)][5-2-(20)][5-2-(21)]の3つで触れられており、それぞれ
- 2022年1月より医療費助成通院・入院も18歳まで無料拡大
- 小中学生に補助金を年間7万円支給
- ナゴヤわくわくプレゼント事業で出産で5万円分の子育て応援ギフトをプレゼント
といったものです。
医療費助成については、18歳まで入院も含めてカバーするのは政令指定都市で初だそうで、子供の疾病に対する安心感が高まるのは嬉しいところです。
また、小中学生に対する補助は、学校給食、学用品費などの費用として年間約7万円を補助し、さらに入学年度は約5万円、修学旅行も実費支給するそうです。
ただし、年収によって対象が制限される予定で、4人家族で年収500万円までが対象という計画のようです。
ナゴヤわくわくプレゼント事業については別記事を書いたのでこちらを御覧ください。

一方で、[5-2-(19)]では給食無償化は年収によって制限を設けるとされており、上記のような施策を行うためのメリハリを付けた形を考えているようです。
公立小中学校設備の改善
[5-1-(12)][5-1-(13)][5-1-(14)]で触れられており、それぞれ
- 洋式トイレの整備
- 体育館に対するエアコン整備
- 茶室の設置
トイレ改修に関しては、洋式化率の低い学校から整備していくとのことです。
正直、名古屋の小中学校は設備が新しいところが少ないので整備を進めてほしいところです。
体育館のエアコンに関しては、特別支援学校、中学校は令和5年度中に設置完了計画済だそうで具体化が進んでいます。
小学校に関しては「早期実現を目指す」というレベルで、時間がかかりそうです。
茶室については、現時点で名古屋の小中学校67校に茶室設置が実施済みか今年度に設置予定(17校設置済、50校今年度設置予定)だそうで、それを全400校に拡大したいという意向のようです。
正直、文化は大事ですが、使用頻度からするとちょっともったいない気がするので、設置するよりは茶道体験的なものを年1回でもやったほうが良い気がしますが…どこかに配慮があったんですかね?
学校改革関連
これは完全にそういう意向がある、というレベルのものだと思いますが、[5-1-(1)][5-1-(5)]で言及があります。
[5-1-(1)]は高校入試に関して、内申点制度を大改革し、子どもを過重な学習負担から解放する、という内容に触れられています。
以前、以下の高校入試改革の記事は書きましたが、さらなる改革を目指す、という事なのでしょうか。

確かに、内申点の比重が高い現制度では中学2年-中学3年の精神的負荷が高いですし、個人的には実技も含めた全教科が優秀であることを求めるのは時代遅れだと思うので、思い切った改革をしてほしいところです。
もうひとつの項目は
「市立小中一貫校(できれば高校も)を新設する」
というなかなかチャレンジングな内容です。
ここでは、
「子どもたち1人ひとりが好きな人生を生き、自分がやりたいこと、好きなことを自ら発見し、自分で探ることを目指せる世界最先端ナゴヤモデルの一貫校を新設。モデル校からナゴヤ、日本の学校を改革」
と書かれており、まずはモデル校を造り、それを広げていくイメージのようです。
現時点でも笹島小・笹島中は一貫校に近い存在ですが、これを拡大し、更に高校まで一貫教育を進めていきたい、ということなのでしょうか。
なお、関東では公立の中高一貫校はごく普通の存在で30校以上存在し、非常に人気が高まっています。
以下の記事を読めば、公立一貫校のイメージはつくと思います。
こういった教育環境の差分が地方格差を生む一因となっており、名古屋の魅力を高めるためにもぜひとも実現してほしい施策だと思います。
まとめ
以上、駆け足でしたが特徴的な内容をまとめました。
選挙対策で高齢者対策ばかり言う首長が多いなか、これだけ子育て関係に言及している首長は珍しく、実際に動き出しているのは非常に好印象を持ちました。
どれだけ実現できるかはわからないですが、少なくともマニフェスト上は、
「子育てしやすい名古屋を作る」
という意思を感じるものでした。
また、子育て関係はもちろん、それ以外の項目でも、IT技術を活用する内容も積極的に触れており、子育て支援を充実する方向性とともにITを活用していく方向性も充分感じ取れる内容でした。
個人的には構想段階ではあるものの、
- 公立高校入試改革
- 革新的な公立一貫校の新設
の2点をぜひとも進めてほしいですね。
今回は以上です。
皆様の参考になれば幸いです。
(参考)子育てに関するマニフェスト抜粋文
- 子どもが安全に学べる環境整備。小中学生への配布タブレットの家庭持ち帰り早期OKへ。[1-(5)]
- コロナ禍における子育てするお母ちゃん、お父ちゃんの支援[1-(6)]
- 子育て世代が移動しやすいナゴヤ
ベビーカーや子どもと一緒のお母ちゃん、お父ちゃんが移動しやすいナゴヤ。多胎児育児は特に大変。駅や地下街、公共施設のエレベーター等移動経路を調査し使いやすく。[2-(2)]- 公立中学校の卒業式日程の見直し
公立高校受検の直前に行われている公立中学校の卒業式日程を見直し、公立高校受検のあとに行うようにする。[3-(15)]- 子ども会の活性化
子ども会の加入者増につなげる施策の充実。子ども会を活用した地域助け合いづくりの検討。なごや子ども応援委員会との連携。[4-(1)]- 学校は子どもたちが中心。学校・教員の意識改革
子どもを過重な学習負担から解放。子どもたち1人ひとりが好きな人生を生き、自分がやりたいこと、好きなことを自ら発見し、自分で探ることを目指すナゴヤ独自のeducation(教育)の一環として、15の春を泣かせない。子ども観(子どもをどう捉えるか)、高校入学試験、内申点制度を大改革。生徒はカスタマー(お客さま)、教師はアドバイザー。生徒と教師の関係を根本的に変える。1人の子どもも死なせないナゴヤへ。[5-1-(1)]- 「市長いじめ・生き方相談ホットライン」を設置
いじめや、友人関係、成績、部活の挫折等で生き方に悩む子どもたちの相談を市長が直接受け、子どもの生き方を応援する常勤スクールカウンセラーへつなぐ。[5-1-(2)]- なごや子ども応援委員会が日本のフロントランナー
子どもたち1人ひとりに応じて人生を応援。常勤専門職のスクールカウンセラー全中学校に配置済み。今度は市内全小学校へ配置。スクールカウンセラーの管理職も増やし、日本のフロントランナーであるなごや子ども応援委員会の運営強化。[5-1-(3-1)]- なごや子ども応援委員会のさらなる周知
子ども応援委員会の電話番号等を広報チラシ等に記載し周知。広報媒体、イベント等を活用し広報活動実施。[5-1-(3-2)]- 地域や関係機関との連携強化
PTAや子ども会等と連携を図り、地域ぐるみで子どもを育てる。[5-1-(33)]- 名古屋市立大学と連携し、子どもを1人も死なせない社会、文化の醸成。ここにいたいと思う学校作り。スクールカウンセラーなどを養成する大学院を名市大に設置済み。拡充をめざす。[5-1-(3-4)]
- 市立高校チャレンジ入学枠創設
不登校など特別な事情がある子どもたちに市立高校チャレンジ入学枠を創設。学びたい意欲のある子どもたちを応援する。[5-1-(4)]- 市立小中一貫校(できれば高校も)を新設
子どもたち1人ひとりが好きな人生を生き、自分がやりたいこと、好きなことを自ら発見し、自分で探ることを目指せる世界最先端ナゴヤモデルの一貫校を新設。モデル校からナゴヤ、日本の学校を改革。[5-1-(5)]- スクールイノベーション事業をさらに進める
令和2年度からスクールイノベーション事業実施。子ども1人ひとりの生き方・考え方をすべて認める子ども中心の学びを実現。画一一斉教育から脱却し本物のアクティブ・ラーニング。[5-1-(6)]- 学習用タブレットは子どもが好きに生きるための道具
学習用タブレットは教員が子どもを管理する道具ではない。子どもが好きなことを自分のペースで学ぶための道具。学習ドリルや学習共有ソフトなどは予算化済。今後も子どもたちが自由に学ぶためのソフトウェア投資を惜しまない。学校でのタブレット利活用を支援するスタッフも十分に配置。[5-1-(7)]- 令和元年度に子どもの権利相談室「なごもっか」を設立。
さらに積極的に学校制度改革を提言し子どもの命を守る。[5-1-(8)]- イノベーション人材の育成
AIやプログラミングの知識は、これからの時代の「読み書きそろばん」。イノベーション人材の育成に向け、民間で活躍する高度人材による教育を実施。[5-1-(9)]- 成績、発達障害など、子どもと家族の悩みに早急・個別対応。学校におけるインクルーシブ教育の実現。子どもの未来応援講師及び発達障害対応支援員の派遣。[5-1-(10-1)]
- 子どもや青年の就労体験・就労支援の強化、法人会・中小企業同友会などと連携。居場所作りの推進。[5-1-(10-2)]
- 名古屋めし【プレミアム小学校給食サービス】
献立を充実し給食の時間を楽しめる工夫。更に名古屋めしの献立により子どもたちへ名古屋独自の食文化の魅力を提供。予算化済。[5-1-(11)]- 学校トイレの環境改善
トイレ改修のペースアップを図るため、洋式化率の低い学校を中心とした改修計画を策定し、設計・施工実施。更に指定避難所のトイレ洋式化に向けて改修を実施。[5-1-(12)]- エアコン小中学校体育館早期設置
特別支援学校、中学校は令和5年度中に設置完了計画済。体育館エアコンは子どもの命を守る大切なもの。災害時の安全な避難所運営にも必要。小学校エアコン設置も早期に実現をめざす。[5-1-(13)]- 小中学校全400校に茶室を
市内小・中学校67校に茶室設置(17校設置済、50校今年度設置予定)。小中学校400校に早期に設置。子どもが和の文化に親しみ温かい心を育む。地域の伝統文化を守る皆さまも応援。[5-1-(14)]- 待機児童8年連続ゼロを目指す
河村たかし、市長就任時には、待機児童が2年連続ワースト1であったが、就任と同時に、待機児童対策を強力に推し進めてきた結果、国規定の待機児童が7年連続ゼロになった。これに甘んじることなく、子どもが希望の保育所に入園できるよう、未利用児童の解消を目指す。そのためには、改造が容易な木造の保育所を小学校、中学校に整備し、将来、学校内保育施設が不要になった場合には、地域スポーツ施設などに転用可能とする。[5-2-(15)]- 保育園運営費補助金継続、公立職員給与と同水準継続[5-2-(16)]
- 教育無償化への国の流れに対応
令和元年10月より幼児教育・保育の無償化を実施。education(教育)への投資は、国や地方自治体の宝。経済効果も大きい。[5-2-(17)]- 子ども医療費助成通院・入院も18歳まで無料拡大は日本1。
政令市初。令和4年1月より実施予定。[5-2-(18)]- 給食無償化は金持ち優遇
現状で年収(例えば3人世帯で414万円以下)により無償。
給食では有機農産物の使用を拡大。[5-2-(19)]- 日本1の就学援助へ
小学生、中学生ひとりあたり、学校給食、学用品費などを補助。年間約7万円。入学年度はさらに約5万円、修学旅行も実費支給。4人家族で年収500万円まで対象世帯恒久拡充。[5-2-(20)]- 日本1(政令市)の出産祝い制度
ナゴヤわくわくプレゼント事業で子育て応援。出産で5万円分の子育て応援ギフトプレゼントを予算恒久化。昨年度も適用。[5-2-(21)]引用元:河村たかし マニュフェストより抜粋
コメント